環境とすまい

我が国における住まいやまちは、図1.図2.が示すように、多様な自然災害や日常災害に日夜晒されています。特に近年、頻発する災害や、今後発生することが予測されている災害を前にして、どんな立地環境にあっても、安全に安心して暮らせるような住まいを提供することが喫緊の課題です。
言い換えれば、住まい・まちを持続可能な長期の時系列で考える(サステイナビリティ)際に、避けては通れない災害の課題をあらかじめ取り込み、計画・設計・運営を行う取り組みが求められているのです。災害にも地震、津波、台風、大雨、火山噴火のような自然災害から、家庭内で多くの方が死傷する日常災害まで、その内容は実に多様です。その結果として、人の命を守り、回復・治癒を促す安全保障(レジリエンス)が、住み手の安心・安全につながる住まい・まちづくりの不可欠で中心的課題であることは言うまでもありません。
今冷静に考えてみれば、回復・治癒が生態系や自然の営みによってしなやかになされてきた我々の暮らす地球環境の特質こそ、近年問われてきたサステイナビリティの基本的な要因であったことに気付かされるのです。

日本における主な自然災害

図1.日本における主な自然災害(1990年〜2011年、死者50人以上)

日常災害としての家庭内の不慮の事故死

図2.日常災害としての家庭内の不慮の事故死(2011年)



この将来も含めた現代的課題に対処するために、「生活継続計画 (Life Continuity Plan: LCP)」を提案します。これは、すでに企業で普及している災害後の「業務継続計画(Business Continuity Plan: BCP)」に対応し、「業務」を「生活」に置き換えたもので、生活の場である住まいを提供する企業にとっては、互いに補完し合ってCSR(Corporate Social Responsibility)の一翼を担うシステムとも言えるものです。
具体的には、災害の頻発を前に時系列(災害時→復興時→平常時)で対策を紡ぎ、戸建てから近隣、地域へとスケールに応じた技術やプログラムをマトリックス化したものです。

生活維持計画LCP基本フレーム


LCPを用いて、網羅的に洗い出された住まいにおける自然・日常災害への対策や取り組みがどの程度なされているのかを明らかにします。本診断表は、まず現状の住まいについて振り返り、その対策や取り組みの全体像を簡易に診断することから始まります。そして、その課程での「気づき」から今後の住まい作りにどのような対策を講じるべきかを判断する、そのためのわかりやすい診断ツールとして使えるように開発されました。

その結果に基づき、何をどのように実施すべきなのかを診断します。実際には、その内容の範囲やレベルは、住まいの立地特性や住み手の属性やライフスタイルに大きく左右されます。従って、この診断表では、それにケースバイケースで対応できるように、総合的かつ簡単で基本的な質問を立て、それらの重要度に応じて選択肢から答えられるように工夫されています。

その結果、本診断書には下のような役割が期待されます。

1) LCP診断表で現在の住まいの安全・安心度を測り、総合的な実態を知る
2) 住み手の実態をベースに、新たな住まいづくりの安全・安心に関わる対策や取り組みの有無をリスト化する:新築の場合
3) 住み手の実態から、既存住宅の改修の安全・安心に関わる対策や取り組みの有無をリスト化する:リニューアルの場合 今後は実際に使ってみてできるだけ多くのサンプルを蓄積し、その結果を分析しながら、構成や内容を改善していきます。



LCP診断表