世界の環境共生住宅 -02

ぺルラッハの長屋

DATA

 
■立 地 ドイツ連邦共和国 ミュンヘン市
■竣 工 1978年
■規 模 6戸

ペルラッハの長屋は、1978年にドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘン郊外に建設された、6戸からなる環境共生住宅です。建設当時は、旧西ドイツ各地で実験的に行われていたコーポラティブ+DIY住宅のモデルとして注目を集めました。
プロジェクトを先導したトゥート夫婦は、当時30代後半の若さで、建築家とコーディネーターと入居者の三役をこなしています。このプロジェクトで目指したのは、@住まいづくりへの住民参加、A徹底したローコスト化、Bエコロジカルな配慮という3点です。トォート夫妻はまず、ローコスト住宅を実現できるディティール集を作成しました。それをもとに居住者を募集し、躯体以外は入居者が自らの手で施工を行いました。

完成した住宅は、まちなみに調和する外観を旨とするドイツの集合住宅とは極めて異色とも言える多様性と個性あふれる外観となりました。
エコロジカルな配慮に関しては、主に熱環境をテーマとした対策がなされています。各住戸には、温水暖房と給湯用のガスボイラーが設置され、それを補う目的で巨大な南面の温室と屋根裏、および床下を利用した太陽エネルギーのパッシブ利用が図られています。


ローコスト化を実現する手法として、@できる限り市場性の有る材料を選択、A未仕上げで済む材料の多用、B直接購入による材料仕入れ価格の低減、Cジョイントの徹底した簡略化、D設計変更や改装に容易に対処できるフレキシビリティ、これら5つの取組みにより、総工費を通常の4〜5割低い価格に抑えることに成功しています。
 
冬期は、床下と屋根裏にある換気口を閉じて居室を外部の寒気から守る熱的緩衝ゾーンをつくり、そこで集められた暖気を居室に取り込み暖を得ます。一方、夏期は建具を開放し、温室のブランドを閉じて強い太陽光を遮蔽すると共に、床下の涼風を上部の換気口や屋根裏換気口まで自然に循環させ涼を得ます。
 
温室の下には地下室が設けられており、そこが、DIYの工房となっています。建設の際には、この地下室が工作所となり、入居者達による、木軸の躯体を除くあらゆる施工が実施されました。竣工後は、修理、修繕のために活用されています。



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