世界の環境共生住宅 -01

カッセルのエコロジー団地

DATA

 
■立 地 ドイツ連邦共和国 カッセル市
■竣 工 第1期 1984年
■規 模 敷地面積
建設戸数30戸

カッセルのエコロジー団地は、カッセル市の住宅土地政策として、若年世代の低所得、大人数の家族でも住宅建設の機会を提供しようという「ユンゲ・ファミリエ(若いファミリー)計画」と名づけられたプログラムにより計画されました。
建築家ヘッガ―夫婦、ミンケ教授のコーディネイトによる、コーポラティブ型エコロジー団地で、「環境と住まい」のプロデューサーである岩村教授も計画に参加し、自邸を建設しています。

「広く環境問題に視座を置いた、省エネルギー、健康、ローコストの住宅を団地規模で実現する。」という、住人たちが自ら定めた団地の基本方針に従い、高断熱化、エコマテリアルの採用、屋根緑化、樹木の保存、温室利用など様々な取組がなされています。築後10数年が経過した団地は、すっかり周囲の自然に溶け込んでいます。
団地についてもっと詳しく知りたい方は、「建築環境論」(鹿島出版会 岩村和夫著)をご覧下さい。

景観については、屋根に草をはやす、勾配を一定の範囲におさえる、外壁の仕上材に無垢の板材を使用すること以外、規定はありません。多様な形態を許容しながら、調和の取れた緑に豊かな団地の景観を形成しています。

団地内の集合駐車場も、屋根緑化を施すことで、周囲の自然環境と美しく調和しています。


【岩村自邸】

無塗装のカラマツ材の外壁は時間と共にその表情をかえ、周辺の環境に馴染んだ落ち着きをみせています。

南側に開いた中庭は、北風の影響が少なく、晴れた日には気持ちの良い屋外のリビングになります。

 

敷地内にはスモモやりんごなどの果樹が保存され、収穫の時期には沢山の実をつけます。

南側には温室を設け、太陽からの光と熱を取りこみます。冬期にはここで暖められた空気を居室に導きます。なお、開口部からの熱損失を抑えるため、全てのサッシは木製、ガラスはペアガラスを採用しています。

 

天井は梁を現して、木材の自然の調湿効果を促しています。内装の仕上は・・・

吹抜け空間とガラスブロックの壁で明るい居間です。


【ヘッガー邸】

当団地のコーディネーターでもあるヘッガー夫妻の自邸です。切り妻の屋根は緑化されており、温室を付設しています。外壁は岩村邸同様、経年変化が美しく、落ち着きを見せています。2戸1の住戸になっています。

温室部分です。夏季には日射を遮蔽できるようにしています。

室内です。梁は現しにしています。壁は粘土ブロック積みの上にしっくいで仕上げています。

【ミンケ邸】

北米インディアンのホーガン構法による八角形のプランをユニットとしています。建築家で大学の教授でもあるG・ミンケ氏は、建築材料としての粘土に関する研究で知られ、自邸内部の壁体にも様々な形での試みがなされています。その他、温室やサーマルポンドの設置など、太陽エネルギー利用でも積極的な住宅です。
玄関はうっそうとした緑に覆われ、一見すると入口を見落としそうです。緑化屋根の草と地面の緑が一体化しています。

非常に有機的なキッチンです。

明るい光が差し込む温室です。壁はいずれも粘土で作られています。

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