世界の環境共生住宅 -04

ベトンクール・ジャンヴァロン地区 HLM団地再生プロジェクト

DATA

 
■立 地 フランス ベトンクール (モンベリヤール近郊)
■竣 工 1990/1995年
■規 模  


ジャンヴァロン地区は、古い集落を見下ろすフランス東部の台地の縁にあります。近隣の自動車メーカーの従業員住宅団地として発展したまちは、近年の激しいリストラの余波を受けて荒廃し貧困化が進み、周辺住人からも敬遠される住宅団地へ変わりつつありました。そのような状況の中で、集合住宅の建て替え計画がなされ、ゼロからの再スタートではなく既存の建物を再構成することによる親しみやすい集住体をイメージした計画案が、ベルギーの建築家ルシアン・クロール氏によって提案されました。結果として、従前とは見違えるほどの魅力的なまちが完成しています。

 


この再生プロジェクトは、バラックと化した集合住宅の上層階を切断し、谷の集落から連続する切妻屋根を持つ多様な建築形態に再生すること、そして、まちの中に住民の営み、商いの場を仕掛けることでした。また、解体・再生によるまちづくりが織り成す、新旧複合の実験でもありました。そこから生まれる新住民と旧住民のコミュニティは非常に良好な関係となり、活性化したまちは快適な住環境を形成しています。スクラップアンドビルドではなし得ない、環境共生の理念が形になった事例です。

古い集落から連続する切妻屋根のスカイラインによって、地域の景観を継承し、全く同じファサードを持たない多様性のある建物群が、親しみやすい集住体のイメージを作り出しています。
再生前の住棟は、いわゆる箱型の無表情な集合住宅でした。このような形態のものを基に解体/再生が行われています。住棟によっては、解体の際に断熱材が環境に悪影響を及ぼすとされ、着工前に厳重な調査が必要なものもあります。
まちの中に仕込まれた住民の営みの場。この広場のから、ベトンクールの計画はスタートしました。
住戸内から屋外を望むと、外構の樹木と緑豊かなバルコニーの植物が目に映ります。居住者は、この住宅団地を非常に気に入っていて、一生ここを離れるつもりはないそうです。

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